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ECだけじゃない。再配達の問題点

最近、ニュースにもなっている宅配便の「再配達問題」


環境省のプロジェクト
COOL CHOICE できるだけ一回で受け取りませんかキャンペーン~みんなで宅配便再配達防止に取り組むプロジェクト~

 

環境省が宅配便の再配達削減キャンペーン - "できるだけ1回で受け取り" | マイナビニュース

 

再配達時のトラックのCO2排出抑制に向けての動き。
当然ながら、再配達によりデメリットは環境だけではない。

・配達員の残業問題
・業界求人の低下
・配送品質の低下
などなどがあり、再配達は
 
 百害あって一利なし

なのである。


 
これまでは業界関係者その中でも陸の物流業者のみが「再配達抑制」を叫んできたところへ、
行政、小売り、陸以外の物流業者が集まり本腰で取り組み始めたようである。


ただ賛同企業を見ると、物流業界の企業と小売業が目立つ。

かなり乱暴な分け方だが、
 ECで売る側
 ECの商品を運ぶ側
 自社のサービス
のいずれかに属する企業ばかりではないだろうか。

近頃は、アマゾンや楽天に代表される「EC」が注目されているから、
ECの商品配達時の再配達が目立っている事は仕方がない。

しかしながら、「再配達」問題を検討する際に是非考えてもらいたいポイントがある。

それは、
 EC以外のBtoC配送
である。


■EC以外のBtoC配送とは

例えば、食品メーカーが行うプレゼントキャンペーンの配送、全員プレゼントキャンペーンなどである。

受取り主は個人であり、荷主は企業。
一度の出荷数は大量で、一斉に出荷されるケース。

ただし、ECとは異なり受取り主である個人は一切の金銭を支払わないケースである。

■何が問題なのか

『届けられず出荷元に返品される』問題が発生する

 返品は物流業者に負担がかかる、その負担は費用となり
 費用は荷主である出荷元、つまり企業への負担へとつながる。


■返品されるパターン

1 住所情報精度が低い
絶対欲しいものならともかく、自分で支払いが発生しない状態で登録(記載)した個人情報は住所情報に間違いが多い。
住所に間違いがあると当然『届け先』事態が存在しない。

2 受取人の不在
ECのように、注文時に日付時間指定ができるわけではない。
そもそも、登録した日と物が届く日の間がかなり空く事が多い。
その結果、届けても不在になることが多い。

3 転居してしまう
登録した日から届ける日が離れてしまう事も多いため、その間に引っ越ししてしまうこともある。
郵便などの場合は転送ができるが、転居先不明で返品されるケースが多い

4 受け取り拒否
登録した人が不在で家族しか在宅していない場合、
「そんな荷物知らないから受け取らない」
というケースも発生する。

上記のようなケースでは、宅配業者が持ち帰り
状況によっては何度か配送に向かい、それでも不在の場合は
出荷元に返品となる。

■返品による負担

では、返品となるとどのような負担が発生するか。

1 宅配時の負担
何度も届け先へ出向く負担が発生する。
所謂再配達である。
全く存在しない住所や受取拒否ならば再配達の必要なく返品となるが、
(受取拒否でも注文者へ連絡を取り再配達する場合もある)
それ以外の場合は、何度も届け先へ出向くのである

冒頭の再配達削減キャンペーンは、この負担を軽減しようという趣旨である。

2 出荷元へ配送する負担
どうしても届けられない場合、出荷元へ返品のために荷物が移動する。
この費用が発生する。
通常、配送料金は出荷元から出荷先への費用である。つまり片道料金なのである。
状況がどうあれ、出荷先から出荷元へ移動という状況が発生したならその分の料金が発生するのは当然であり
返品の配送費用は物流業者が立替え、荷主に請求となる。

3 物流業者の返品処理負担
返品が発生した場合、普通に出荷するよりも1件あたり少なくとも3倍の手間がかかるといわれている。
返品発生時に発生する手間は
 ・返品受取
 ・返品品の仕分け
 ・返品の履歴データ化
 ・再配達のための出荷先への連絡
 ・物を再利用する場合は、出荷先情報を保持したまま保管
 ・再出荷作業
 ・着完了の確認
などが発生する。
通常の出荷(初回の出荷)の場合、ほとんど最後の二つの作業に品物の入庫、一時保管が発生する程度なので
返品~再出荷となった場合の手間と比べる膨大になることがわかると思う。

物流業者で行う場合、これらの手間はすべて人の作業時間となり荷主の費用負担増という結果になる。


■ 負担がどう生活者に影響するか

実のところ、ECではないBtoC配送の場合キャンペーン関係が多いので
企業の費用は「物流費」ではなく「広告費」として扱われる事がおおい。

物流費となると企業としては単純に「コスト」だからコスト削減が推進される。
ECにおける再配達抑制の流れは、再配達が「コスト」だから注目されるし
再配達がなくなれば、全体の宅配料金が下がり利益が増える。

これが、「広告費」の一部となると少し変わってくる。
キャンペーンの場合、企業が直接キャンペーンを実施するために物流業者へ発注するのはあまりなく
その間に代理店などが存在する。
代理店は配送における返品の追加費用負担も「売上」の一部になるため
あえて返品を抑制しようとは思わない。
当然、届け先である生活者からの「届かないクレーム」が出ないように注意は払うがその程度なのである。
そして、キャンペーンの結果その商品の販売数への影響の方が重要であるため、
キャンペーンプレゼント自体の問題はどうしても二の次になってしまう。

極端に言えば再配達を含めた返品の影響は
 ECの場合は万人にとって「悪」
 ECではないBtoC配送の場合は、「注目されない」もしくは「善となることもある」
という構図になる。


そうすると、どのように生活者に影響するか
広告費はその商品の費用に含まれるため値段が上がる。ということになる。


■ 解決する策
では、どのように解決する策があるか。

企業側
1 当選者、配送が決まった後に住所情報を取得するようにする
PCやスマホなどで「当選通知」を送り、そのあとに住所情報を取得するようにする。
ただ、この方法ではスパムメールと認識されたり、そもそもメールを見落とされる可能性があるため
このご時世では難しいのかもしれない。

2 信頼性のある住所情報を保持している企業と相乗りスキームを構築する
携帯会社やカード会社などの住所情報を利用するスキームを構築する、という手がある。
アマゾンのAmazonログイン&ペイメント のようなスキームである。

3 配達関連情報を明記する
配達時期、宅配業者、時間帯などをあらかじめ生活者に告知しておき、受け取れない場合は再配達しない。と明言する。
これは、受取促進の意味合いもあるが、再配達しませんよ!
と、告知しておく事がキーとなる。
返品が発生したら履歴までとって、返品物は廃棄。
これでもだいぶ違ってくる。


生活者側
1 受け取る
不在通知への対応、ヤマトのクロネコメンバーズサービスの利用など。
無料といえど、できれば頑張って受け取る努力をする。
受取さえすれば問題は解決なのだから

2 住所をちゃんと記入する
住所は読める字で間違えずに入力、記入する。
適当に書くなら「最初から応募するな」ということである。

3 家族に言っておく
自身が不在で家族が受け取る場合、ちゃんと伝えておく。

4 メールアドレス、電話番号は正しく
配達時、返品後、連絡が取れないと「不明」のままになってしまう。
「不明状態」がなくなるだけでも違うのでちゃんと正しい情報をのせる。


以上がECだけじゃない。再配達問題である。
結局は生活者に跳ね返ってくるし、企業にとってはマイナスしかないので
ECの再配達同様に返品問題も検討をしてほしい。